福 島 人 権 宣 言


 私たちは今、大いなる不安の中で日々生活しています。うつくしま、福島。私たちの故郷がカタカナでフクシマと呼ばれたり、放射能問題にこれほど頭を悩ますとは全く考えたこともありませんでした。

 原発事故直後、私たちは老若男女を問わず、放射線を浴びました。その後も、線量の違いはあれ、外部被ばく・内部被ばくを続けています。原発から放出された眼に見えない放射線が、電離作用によって身体細胞の遺伝子を切断しています。一時は住み続けるかどうか家族で話し合わなければならないほどの大きな衝撃を受けました。今も子どもを外遊びさせるかどうかなど、日々困難な選択を迫られています。何も気にせずに深呼吸することさえできなくなりました。これらの事実により、私たちは精神的にも大きく傷ついています。

 このような放射線の健康リスクと隣り合わせの環境で、日常生活を送っている人が大勢います。しかし決して健康に無関心というわけではありません。簡易な放射線検査機を購入して測定をしながら、外部被ばく・内部被ばくをどうやって避けて生活したらよいか毎日悩んでいます。特に、感受性の高い子どもたちの被ばくを避けるためにどうしたらよいかは切実な問題で、将来に不安を感じています。

 住み慣れた場所から避難している人も多くいます。それが強制であれ、任意であれ、それまでの日常生活を捨てて生きていかねばなりません。経済的な負担はもちろんのこと、家族や地域と離ればなれになることによって精神的な苦痛を感じています。

 福島に住み続ける人も、去った人も、みな故郷を愛する気持ちは同じです。にもかかわらず、福島に留まる人、避難している人、避難しようとしている人との間に心の隙間が広がっているという悲しい現実があります。

 原発事故により私たちは多くのものを失いました。しかし、もうこれ以上失いたくありません。

一、 私たちには、憲法で保障された幸福追求権があります。

一、 避難する、しないを自分で選択する自己決定権があります。

一、 放射線被害について、私たちが納得いくまで情報を得る、知る権利があります。

一、 差別のない、自由かつ平等な社会を求める権利があります。

一、 健康な身体を持ち、福島の自然を愛し、楽しむ生活を送る権利があります。

一、 財産が放射能汚染により侵害された場合には完全な補償を求める権利があります。

一、 私たちが愛した元の福島を返してほしい。そう主張する権利があります。

   何も考えずに水が飲みたい。おいしい米、野菜、果物、魚、肉、これらを何の不安もなく食べるこ とのできる、元の福島に戻してほしい。

    放射能のことなど考えないで、子どもの笑顔を見守り、家族や近所の人たちが笑顔を交わして仲良くできる、昔の福島に戻してください。

一、 元の福島に戻すことが無理ならば、私たちが納得のいくまで、その償いを求める権利があります。

 私たちは立ち上がることをここに宣言します。本当の笑顔と人権を取り戻すため。


                            2013(平成25)年4月18日

 私たちは「福島人権宣言」に賛同します。

福島県 福島市 

 深田和秀 大貫友夫 大貫節子 近藤香苗 小池光一 小池順子 石田葉月 立川幸恵 阿部泰宏 

 斉藤あゆみ 松本和彦 石川嘉寿子 村越弥生 佐藤弘子 降矢美彌子 大峰千枝 平井ふみ子 

 菊地眞佐子 馬場幸男 渡辺ヒロ子 後藤倫子 野地祐子 手塚宣幸 手塚優子 小川登美子 

 佐藤真紀子 古関洋子 高和文子 服部千枝 室井美江子 佐藤友三 佐藤慶子 田中エイ 

 高橋和子 佐藤雅彦 宍戸えみこ 和田幸雄 鈴木シズ子 中村素子 荒木田岳 小林忠 

 早川えつこ 荘司信行 深瀬ノブ子 畑中洋子 長沢純子 渡邉實 菅野幸三 小幡利貞 小幡玲子

 植木律子 佐久間章子 佐藤早苗 塩谷弘康 石本裕人 石本愛子 石本奨子 大関淳貴 大関裕貴子

 宍戸宏行

伊達郡  太田香織 太田櫻子 太田光男

二本松市  野地亮 野地幸子 野地栄 田口知江 荒尾駿介 荒尾フミ子 渡辺理江 佐藤道之助 

     丹野信嗣

郡山市  篠田洸 成田恵子 広野晶生 黒澤トク子 萩原ゆきみ 八巻俊憲 川合正夫 橋本寛

伊達市  芳賀信子 齋藤和音 渡辺育子 遠山光博

相馬市  鞠古綾

いわき市 山野邉元美 

須賀川市  鍋本寛治

浪江町  遠山光博


宮城県  小幡重人 森田明彦 青柳純一 佐藤美樹子 増森和希 穂積正一 内田牧子

山形県  穂積明日香

新潟県  佐藤直輔 中島彩子

茨城県  阿部章 荒川照明 徐信 伊藤哲司

栃木県  半田守孝 仙波勉

埼玉県  黒田歩夢 斉藤美智子 稲垣博美 片山敬身 内田理 小嶋里奈

千葉県  下正宗 柴田浩司 室敦子 戸倉直実 長村雅文 田村房子

東京都  

 小川桂子 小出朋子 倉科光子 堀潤 飯野真澄 須永祐慈 大河内泰樹 野村昌毅 松本典丈

 矢野和葉 東英明 齋藤いずみ 竹内昌義 小泉美枝 平本剛 梅内林太郎 山崎芳 星野亜珠香

 小嶋正明 倉田和子 上野佳子 松山景二 阿部裕行(多摩市市長) 薄井清美 中村誠士 佐藤秀明

 小久保勇三 田辺春一 冨安久美 和田秀子 小阪裕城 西脇洋子 辻村祐子 福川世志明 小川清

 玉手一成 藤原千晴 遠藤憲靖 伊藤敦

神奈川県 

 平野太朗 望月亮秀 服部照男 大金亨 村雲司 郡司真弓 東晴彦 黒澤利幸 大森裕子 細谷優 

 国分美知子 秋本大輔 小野寺重則 窪倉孝道 伊藤牧 緑川珠見 坂内義子 千葉俊一 弦巻優矢

群馬県  北村直人

山梨県  小尾栄子 西堀俊和

静岡県  林邦之 畦地まり子 相曽茂 東山浩子 坂本廣幸 横野守

愛知県  三浦悦夫 明日美

岐阜県  小森真人 林美香 箕浦ひろみ 佐藤瑛気

富山県  林衛 有山周平

石川県  山根照美

滋賀県  片岡英子

京都府

 吉岡諒 根津耕昌 北嶋佳津江 松本恵里 桑原和則 細川弘明 茨木千尋 田中啓一 岸香織 

 山田耕作 田上淳一 滝田知世 錦炎兄 小寺盛夫 守田敏也

大阪府  

 三田村英宗 三田村浩子 三島照雄 櫻井紀子 福田真由美 園部智加 松本憲子 西村貴裕 千田靖子

 濵田幹男 松尾俊武 奥村剛子 高橋もと子 中井万里子 中西智子 鈴木くみ子 大橋邦子

 田中ひかる 鳥井学

兵庫県  

 坂口照子 日比野純一 久下譲二 小宮勇介 小川幸四郎 水野浩重 落合淳宏 浜田守彦 小宮純子

 神崎敏則

和歌山県  西澤正美 臼井達也 にしでいづみ 福田浩子 三浦ひろの

広島県  國友悦男 石井早苗

島根県  入井真一

山口県  古和田扶美

香川県  松浦まき 堺谷みゆき 秋山晃子 松見千奈美

高知県  小谷操二

福岡県  高柳英子 池田康幸 池田聖子 豊島耕一 山浦芳光 田中美江 大森好美

佐賀県  谷本敏子

熊本県  野村哲也   

ドイツ在住  辻美幸 永島久代

フランス在住 杉田くるみ



       福島県内の各市町村居住者及び元居住者による賛同者募集中。

                                      福島県外の賛同者も募集中!

       

   上記賛同者には数多くの大学教授・准教授の方々が含まれております。

        東京都多摩市市長からもご賛同いただきました!

 


福島人権宣言にご賛同いただける方は、メニューの賛同メールをクリックして賛同メールフォームに記入の上、ファクシミリまたはメールでご連絡ください。 また、賛同者の方でメーリングリストに参加ご希望の方は賛同メールにその旨お書き添えください。なお、氏名が公表されない署名簿も用意しておりますので、そちらにもご協力ください。

Fukushima Declaration of Human Rights


We are currently living in a state of great anxiety and insecurity. "Utsukushima, Fukushima," they used to say, playing on the word for "beautiful" (utsukushii) in Japanese. We never imagined that one day we would see the name of our prefecture written in katakana, an ominous reminder of the fact that "Fukushima" now means much more than just a geographical location. We never imagined that we would have to worry about the problem of radioactive contamination.

In the immediate aftermath of the nuclear plant accident, all of us - young and old, male and female - were exposed to radiation. Since then the amount has decreased, but we are still subject to external and internal radiation exposure. The ionizing effect of the invisible radiation that is emitted from the nuclear plant causes damage to the cells of our bodies, day and night. We are forced to make difficult decisions, such as whether to let our children play outside or not. We cannot even breathe deeply without thinking about radiation. This situation is a source of great mental stress.

Although many people are going about their lives in an environment in which they face health risks from radiation, this does not mean that they are indifferent to these risks. They have purchased pocket geiger counters to check radiation levels, and worry every day about how best to avoid external and internal exposure to radiation. The issue of how to protect children, who are more sensitive to radiation exposure, is a particularly troubling issue. There are a dearth of indoor facilities in which children can play freely while avoiding external exposure, and an insufficient number of devices for measuring internal exposure to radiation. 

There are also many people who evacuated from the places they knew and loved. Whether the evacuation was forced or voluntary, they are now living detached from the lives they used to lead. As well as an economic burden, living apart from their families and local communities has also caused psychological pain.

Both those who have remained in Fukushima and those who have left Fukushima once lived lives of hope and positive expectations for the future. All share a feeling of attachment to their hometowns. Nevertheless, the sad fact is that there is a growing emotional divide between those who remain in Fukushima and those who have left or are leaving Fukushima.

We have lost so many things as a result of the nuclear plant accident; we do not want to lose anything more.

- We have the right to the pursuit of happiness under the Japanese constitution;

- We have the right to determine whether we evacuate or not;

- We have the right to know, which means we have the right to obtain as much information as we feel is necessary about the problem of radiation damage;

- We have the right to demand a free and equal society free from discrimination;

- We have the right to a healthy body, to feel love for nature in Fukushima, and to enjoy our lives;

- We have the right to demand full reparation for damage to our property and assets caused by radiation contamination;

- We have the right to demand that our beloved Fukushima be returned to its pre-accident state:

We want to drink the water without worrying. Please bring back the Fukushima we used to know, where we were able to eat rice, vegetables, fruit, fish and meat with peace of mind.

Please bring back the Fukushima we used to know, where we enjoyed good relationships with our families and our neighbors, and the smiles on the faces of our children;

- If it is impossible to restore Fukushima to its pre-accident state, we have the right to demand reparations for what we have lost.

We hereby declare that we are standing up to reclaim our rights, to bring real smiles back to the faces of people in Fukushima.

May 15, 2012

Fukushima City:

Kazuhide Fukada, Tomoo/Setsuko Onuki, Kanae Kondo, Koichi/Junko Koike, Hazuki Ishida, Yukie Tachikawa, Yasuhiro Abe, Ayumi Saito, Kazuhiko Matsumoto, Kazuko Ishikawa, Yayoi Murakoshi, Hiroko Sato, Mineko Furiya, Chie Omine, Fumiko Hirai, Masako Kikuchi, Sachio Baba, Hiroko Watanabe, Noriko Goto, Yuko Niji, Nobuyuki/Yuko Tezuka, Tomiko Ogawa, Makiko Sato, Yoko Koseki, Fumiko Takawa, Chie Hattori, Mieko Muroi, Yuzo/Keiko Sato, Ei Tanaka, Kazuko Takahashi, Masahiko Sato

Nihonmatsu City: Ryo/Sachiko Noji, Tomoe Edaguchi

Koriyama City: Kou Shinoda

Date City: Nobuko Haga, Kazune Saito

Soma City: Aya Mariko

Sukagawa City:

Saitama Prefecture: Ayumu Kuroda

Chiba Prefecture: Masamune Shimo

Tokyo Prefecture: Keiko Ogawa, Tomoko Koide, Mitsuko Kurashina, Jun Hori, Masumi Iino, Yuji Sunaga

Shiga Prefecture: Hideko Kataoka

Kyoto Prefecture: Ryo Yoshida, Kosho Nezu, Kazue Kitajima

Osaka Prefecture: Hidemune/Hiroko Mitamura, Yoko Kubota

Hyogo Prefecture: Teruko Sakaguchi

Wakayama Prefecture: Masami Nishizawa, Tatsuya Usui

Kagawa Prefecture: Maki Matsuura

Germany: Miyuki Tsuji, Hisayo Nagashima

[Translator's note: This is the translation of the original Japanese version as of 15 May 2012. Names in Roman may not be correct, as the original signatures are given in Chinese characters without reading.]

Translated by Kyo Kageura, Professor of Tokyo University





   福島の人たちの悩みは深いものがあります。目に見えない放射能汚染による健康被害を心配しながら生活を送らざるを得ない人、健康リスクを避けるために避難した人、同じ福島人でありながら分断を余儀なくされ、本来は信頼しあうはずの家族間においてさえ対立関係に直面している状況です。福島から避難した人、福島に残った人、どちらにも共通する思いがあると思います。

  このような苦しみをすくい上げて代弁し、どちらの方でも困難な現状に立ち向かい、今後勇気と自信を持って生きていけるが必要です。その心の支えが「福島人権宣言」になるのではないかと考えています。

   また,原発事故から1年以上経過し、福島の問題が次第に忘れられているような風潮になりつつあります。他方で、福島の人たちの悩みはますます深くなっており、人権問題も複雑化しています。この問題を風化させないためにも「福島人権宣言」が重要だと思います。

  


事務局

弁護士海援隊 赤坂野村総合法律事務所

弁護士 野村吉太郎 (東京弁護士会所属)

107-0052  東京都 港区赤坂 8−6−27 スカイプラザ赤坂311号室

Phone 03-3475-0410  Fax 03-3475-0412





福島人権宣言賛同メールフォーム (1)



  福島人権宣言の賛同者になってもらえる方(ホームページに名前と都道府県名を出してもよいという方)は、下記メールもしくはファクシミリにて住所地(福島県の方は市町村名、他県の方は都道府県名)及び氏名をご連絡ください。下記アンケート(2)に答えること時間がない、あるいは抵抗があるという方、さらには県外の人向けです。


(氏名)


(都道府県名)


FAX 番号 03−3475−0412       E-mail:   office@nomuralaw.com









福島人権宣言賛同メールフォーム (2)




1 福島人権宣言についてどう思いますか? (該当するものを丸で囲んでください)


   ① 良いと思う  ② 悪いと思う  ③ どちらともいえない



2 上記1で①又は②と答えた方については、その理由を自由にお書きください。

                                             (「福島からの声」に掲載する場合があります)








3 あなたが「人権宣言」するとしたらどのようなことを言いたいですか? 

                                             (「福島からの声」に掲載する場合があります)









4 あなたは、東京電力に対し、既に損害賠償請求していますか?


  ① している  ② していないが、今後はするつもり  ③ したが、金額に納得がいかないのでもっと請求したい。


  ④ 今のところするつもりはない。



5 4で②③と答えた方は、どのような損害項目を請求したいと思いますか。




6 あなたの自宅あるいは職場は放射能除染をしていますか?


  ① 既に行った (その場所 自宅  職場  地域  その他)  ② まだしていないが、今後行う予定


  ③ まだしておらず、今後も行う予定なし  ④その他 (                               )



7 福島人権宣言の賛同者になってもらえますか?


  ① なります(賛同者として県市名・名前を出すことに同意します)  ② なれない  ③ 保留するが検討する



8 福島人権宣言はどのような形で知りましたか?


  ① 知人・友人からの紹介  ② ホームページ・ブログ  ③ ツイッター  ④ その他(                   )



9 今後、人権宣言や損害賠償請求に関して案内してもらいたいという方は、以下ご記入ください。

                               (個人情報については事務局が責任を持って管理いたします)



(氏名)




(ふりがな)


(住所)






(電話番号)                                (FAX)


(メールアドレス)








(送信先)FAX 番号 03−3475−0412       E-mail:   office@nomuralaw.com

 


福島人権宣言にご賛同いただける方は、メニューの賛同メールをクリックして賛同メールフォームに記入の上、ファクシミリまたはメールでご連絡ください。なお、氏名が公表されない署名簿も用意しておりますので、そちらにもご協力ください。














損害賠償請求に関する Q&A



Q1.損害賠償の範囲はどこまでですか。

A1.福島人権宣言にもあるとおり、原告(申立人)である皆さんの「納得するまで」の損害賠償を東電に求めていくことを考えています。

  個人ごとに「納得」のレベルや範囲が違いますので、それぞれのお話を伺った上で、事務局では個別の損害賠償請求案を作成します。

  例えば、これまでの避難(強制・自主、長期・短期の別を問わず)の実費(引越費用、交通費等)はもちろんのこと、

   除染費用

   避難に伴う収入の減少分

     避難に伴う生活費の増加分

     その他皆さんの納得のいく損害賠償の範囲を話し合いながら決めていきたいと思います。

  また、既に東電に請求したが拒否されたという方の損害賠償請求についても、再度理論構成をして請求します。



Q2.損害賠償請求の方式はどうするのですか。

A2.第1次的には、原子力損害賠償紛争解決センター(東京)に対する申立を行い、そこで和解が成立しなければ、3年以内(平成27年3月まで)に東京電力及び国を被告として東京地方裁判所に対して訴訟提起します。



Q3.紛争解決センターに対する申立や訴訟提起をしても東電や国が補償してくれる見込みは薄いのではありませんか。

A3.最初からあきらめる必要はありません。国が定める損害賠償中間指針ですら、追補等で少しずつではありますが損害賠償の範囲を広げて変化しています。その意味で、被害者が声をあげることがまず必要なのです。何もしないで国や地方自治体が何とかしてくれるだろうと期待しても、それは無理です。

   「法廷は正義を行うための場所ではない。 弱い者が正義のために立ち上がれることを示す場所だ」(映画「評決」より)。



Q4.東電から送られてきた請求書式に基づいて既に損害賠償請求していますが、その場合でも申立や訴訟はできますか。

A4.できます。東電の書式では十分補償されていないものに対して、(東電がすんなり支払うかどうかは別として)別途請求することは可能です。



福島人権宣言に関する Q&A



Q1.福島人権宣言は、何のためにあるのですか。

A1.福島の人たちの悩みは深いものがあります。目に見えない放射能汚染による健康被害を心配しながら生活を送らざるを得ない人、健康リスクを避けるために避難した人、同じ福島人でありながら分断を余儀なくされ、家族間において分裂寸前にまで追い込まれている人も少なくありません。

   このような苦しみを代弁し、かつ明日を生きていくための糧となる言葉・宣言が必要だということで打ち出されたものです。困難な現状に立ち向かい、生きていくための心の支えになることを目的としています。



Q2.福島人権宣言は、誰が作成したのですか。

A2.福島市内の在住者及び元在住者の人たちの声を聞きながら、それらを踏まえて、弁護士野村吉太郎が作成したものです。(福島人権宣言は、福島の皆さんのご意見や体験を伺いながら、適宜、改訂しています。)

  実際に福島市で放射線量を測定したり、福島在住の方のお話をお聞きするうちに、裁判や損害賠償請求の前に(あるいは前提として)、福島人権宣言が必要なのではないかと、強く思うようになりました。

  平成24年6月21日に成立した「原発事故子ども・被災者支援法」において、福島の人たちを救済する必要性を訴えるものはできましたが、まだ具体的な施策には反映されておらず、まだまだ物足りません。

  福島から避難した人、福島に残った人、どちらにも共通する思いがあるのではないでしょうか。その気持ちをすくい上げ、どちらの方でも今後勇気と自信を持って生きていけるだけの糧が必要です。その「心の支え」が「福島人権宣言」になるのではないかと考えています。

  福島の人たちは、本当は声を上げたいけれども、簡単には口に出せない様々な制約があります。悩みに打ちひしがれている人もいます。そして、原発事故から一年以上経過したいま、福島では、放射能問題で疲れきった人、普段の生活では何事もなかったように振る舞っていてもふと放射能問題に付いて考えると落ち込んでしまう人が少なくありません。平成24年10月22日付け「意見募集結果の概要」(福島大学うつくしまふくしま未来支援センター)でも、福島県内に住み続けるかどうか家族で話し合った人が約半数いること、福島に居住することで子どもの教育面に不安を感じている人が約半数いる等の統計結果が出ています。

  福島の人たちにも人権があるという、当たり前の事実を再確認したいと思います。国際人権規約との関連についても考えていきたいと思います。



Q3.福島人権宣言をすることによって何が生まれるのですか。得をすることがあるのでしょうか。

A3.福島の人達の苦しみは、県外にはほとんど知られていません。もちろん津波被害を受けた浜通りの人たちの苦しみや悲しみ、強制避難区域の人たちが受けている苦難の数々についてはある程度報道がされています。一方、避難区域以外の放射線量の高さや、住民同士の選択によって分断が生じていたり、窓を開けるか、地元のものを食べるか、外で遊ぶかなど、日々のごく当たり前の生活にも選択を迫られ、迷いながら生きているということを、県外の方は知りません。中通りの人たちは福島に住み続けることを批判されて悲しんだり、憤りを感じている人が少なくありません。避難した人たちは、避難先の無理解に苦しみ、故郷から切り離されたという孤独と絶望感に襲われて悩んでいます。

  福島の方たちは、他県では当たり前のように享受出来る権利を失いました。どんな選択をした人でも、この福島人権宣言によって、諦めたり自暴自棄になったりしなくてもいいんだということを分かっていただければ、と思います。

  2012年5月14日以降の改訂版福島人権宣言では、外部被ばく・内部被ばくを避けるために福島の人たちが日々悩みながら生活していること、外部被ばくを避けるための施設、特に子供たちが思い切り遊べる室内プールや体育館などの施設が足りない(施設の開放もなかなかされない)、ホールボディーカウンター等の内部被ばくの程度を検査する機械やそれを受ける機会が絶対的に不足していることを訴えています(後に削除)。原発事故収束宣言以来、避難区域の解除や帰還の奨励等によって、放射線被ばくの事実についても消え去られてしまう可能性があります。被ばくしたすべての人たちが安心して医療を受けられるよう、行政は「被ばく者手帳」などを発行し、広く「原発事故被ばく者」の範囲を定義して、医療の無料化を推進すべきです。その原動力として、この「福島人権宣言」を利用してほしいと思います。

  この福島人権宣言の賛同者が多くなれば、広く世論に働きかける可能性も生まれます。大きな変化が起こせるかもしれません。希望を捨てる必要はありません。

   平成24年11月13日、朝日新聞の夕刊に「福島人権宣言」が取り上げられました。これによって、より多くの方に「福島人権宣言」を知っていただくことができました。しかし、「福島人権宣言」を批判をする方もいます。「福島」という題名で福島を代表したような表現をすることはけしからんだとか、「人権宣言」は無意味で、有害だという方もいます。「福島人権宣言」は、賛同者の宣言です。声なき福島人を応援する宣言なのです。平成24年11月11日に開催されたシンポジウムにおいて、パネリストの郡司さんから「人権に目覚める福島、憲法に目覚める市民を福島から発信していきましょう」との力強い言葉をいただきました。今一度、「人権」とは何か、「福島人権宣言」で取り上げている人権とはどういうものか考えていただき、人権に目覚めて、人権を行使していただきたいと思います。


Q3−2.福島人権宣言では、どのような憲法上の人権を念頭に置いているのですか。

A3−2.以下のような憲法上の規定を前提にしております。なお、憲法97条から99条までも重要な条項ですので、掲載しておきます。


日 本 国 憲 法(抜粋)


第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。


第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。


第二十五条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。


第二十九条  財産権は、これを侵してはならない。

 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。


第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。


第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。


第九十九条  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。




Q4.福島人権宣言の最後の行に、「私たちは立ち上がることをここに宣言します。」とあり

 ますが、「立ち上がる」という意味は、街頭に立ってビラ配りをしたり、シュプレヒコール

 をして拳を振り上げることなのでしょうか。

A4.「立ち上がる」という言葉は、まず第一に、福島の人が自分自身の挫折感、喪失感、絶望感から自分自身を立て直す、という趣旨で用いています。したがって、決して質問にあるような、街宣活動などを意味するものではありません。まず、自分自身の心の中で倒れている自分を立ち上がらせることが大事だと思っています。

  自分自身が立ち直ったら、まず自分自身が何をできるのか考えてみてください。そして、もっと前に踏み出して他の人にも「立ち上が」ってほしいと思ったとき、それぞれの人ができることをやればよいと思います。



Q5.自分なりに福島人権宣言を修正することは可能でしょうか。

A5.もちろん可能です。自分なりの人権宣言を考えることは非常に大事なことだと思います。ご提案があれば、それを事務局まで御連絡いただければ幸いです。それを参考にして、今後の修正案として使用させていただくことがあります。

  ちなみに、現在の福島人権宣言も、何度も改訂作業を経た上での文章ですし、今後も改訂してく予定です。もっとも、当初の案の方が好きだった、という方もおられましたので、当初の人権宣言案を「福島からの声」に掲載しておきます。



Q6.福島人権宣言は、福島だけのものではなく、全ての人に共通するものではないですか。

A6.実は、そのとおりです。福島だけでなく、放射能被害に悩む全ての人、さらには日本全国、いや世界の人にとって共通のものというべきでしょう。しかしながら現状は、福島の人にこんな人権があるのだということすら、おろそかにされ、無視されているのではないでしょうか。まず、福島の人が声を上げなければ、他の人は気づいてくれません。そこで、あえて「福島」を強調しているのです。福島の人が救われなければ、他の人が救済されることはあり得ないのです。

   ちなみに、沖縄の基地問題や水俣病被害等の公害問題と同じ構造と問題があるとの指摘もなされています。



Q7.福島人権宣言には、子どもの権利が不足しているのではないですか。

A7.福島人権宣言は、大人、子ども、高齢者、みんなに共通するものです。子どもの権利を強調しすぎると、大人や高齢者の権利はどうなる、という疑問が出てきます。もちろん、子どもが放射線に対して感受性が高いということは事実ですので、それに十分配慮をしなければなりません。改訂版では、そのことについて若干触れることにしました。



Q8.福島人権宣言は、福島の中通りの人向けのような気がしています。浜通りの人たちが共感できるような人権宣言にならないでしょうか。

A8.浜通りの人たちは、地震と津波によって甚大な被害を受けています。その自然災害による被害、その被害を回復するための社会的、法的な支援が遅れていることは事実です。これも人権侵害の問題です。ただし、この福島人権宣言は、原発事故によってまき散らされた放射性物質による被害に焦点を当てたもので、これについては浜通り、中通り共通の問題ですので、ご理解いただければ幸いです。なお、放射能問題のために強制避難命令が出され、津波や地震で被害を受けた人たちを救援できず、本来は助かる人の命を救えなかったという声もありました。

   今後浜通りの方々からのご意見を伺いながら改定を検討いたしますので、ご意見をお寄せください。



Q9.福島人権宣言に共感はしているのですが、賛同者として名前を出すのは気が引けます。どうしたらよいですか。

A9.賛同者として名前は出さなくても、事務局に対して「名前は出せないけれど賛同します」と書くなどして賛同メールは送ることができます(賛同者としては名前を公表しません)。メールをいただいた方には、随時、ご案内を差し上げます。また、損害賠償請求を事務局に依頼することはできます。



Q10.福島人権宣言について、他の人はどう思っているのでしょうか。

A10.「福島からの声」に随時掲載していますので、お読みください。



Q11.福島人権宣言はいいと思うので、これをもっと広めたいと思いますが、どうしたらよいでしょうか。

A11. このホームページを印刷するなどして 口コミで伝えていただくなり、ご自分のブログでご紹介、リンクを張っていただいたり、ツイッターでつぶやいたりしてご紹介ください。また、今後、広報部などの組織を立ち上げて、さらに広報関係を強化できたらよいと思っております。福島の各市町村にひとつづつ、各避難者のいる地域ごとにそれぞれ支部ができたらいいと思います。支部長を買って出ていただける方を募集いたします。なお、2012年11月11日午後1時半から、福島テルサにて「福島人権宣言」のシンポジウムを開催しました。今後のイベントについてもさらに検討中です。



Q12.福島人権宣言をする人は、損害賠償請求をしなければならないのですか。損害賠償請求するやり方ではなく、他に方法があるのではないですか。

A12.必ずしも損害賠償請求をしなければならないということではありません。人権宣言をした上で、その先の第2段階として、損害賠償請求することを考えようとする方には、その方法等の情報を提供いたします。

  また、確かに、広島・長崎の被爆者に対する被爆者援護法のような特別立法の制定を求め、被爆者手帳のようなものを制度化して国に補償を求めたりすること、あるいは自然放射線レベルまでの除染を求めたり、集団疎開を求めたりすることも考えられます。それらも大事なことですし、選択肢のひとつとして尊重しています。

   ただし、現実的に一番身近なものは、損害賠償請求ですので、ご紹介しているまでで、これもまた選択肢のひとつとして提示しています。

   なお、「相手に請い願うような人間だと思われたくない。 正当な請求はするけれど、 当然無理だと思われるようなことまでは要求しない。 」という意見もあります。しかし、「正当な請求」と「当然無理だと思われること」の違いはどこにあるのでしょうか。現状は、「正当な請求」であっても、加害者である東京電力からは「「当然無理だと思」うという主張がされていることに気付いてほしいと思います。



Q13.福島人権宣言をした人は、「福島人権宣言と損害賠償を考える会」の事務局に依頼して損害賠償請求しなければいけないのですか。

A13.「福島人権宣言と損害賠償を考える会」に事務局に依頼して損害賠償請求することは、選択肢のひとつであって、強制するものではありません。他の弁護団に依頼したり、自分で損害賠償請求することは自由です。損害賠償請求は自分で別にやるという方は、福島人権宣言を自分の心の支えとして、自分の心の中にしまっておけばよいのではないでしょうか。


 


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